メッシがサッカーを完成!エンバペの衝撃にCR7の名声の失墜、整然とした日本のファンまで|カタールW杯の勝者&敗者

Messi Mbappe Infantino Ronaldo World Cup GFX
Getty

2022年カタール・ワールドカップは、4週間に渡った64試合の激闘を終え、幕を閉じた。

今大会は最初から最後までドラマチックだった。グループステージだけでも次から次へと番狂わせが起こり、モロッコの奇跡は準決勝まで続いた。そしてリオネル・メッシは、ようやく最も欲しかったトロフィーを手にし、キリアン・エンバペは史上2人目の決勝戦でのハットトリックを達成している。決勝戦だけでも信じられないほどの話題に満ち溢れた一戦ではあった。

そして今回『GOAL』では、カタール・ワールドカップ全体の勝者と敗者を選出。忘れられない今大会から最も印象的なシーズンを選出する。

文=マーク・ドイル

  1. 敗者:2026年大会のグループステージ
    Getty Images

    敗者:2026年大会のグループステージ

    ジャンニ・インファンティーノ(FIFA会長)はカタールで何度も戯言を述べていたが、間違いなく1つのことについては正しかった。そう、2022年のワールドカップは史上最高のグループステージであった。

    どのグループでも第3節は前代未聞のドラマが発生し、ほぼすべての組が波乱に溢れた。もちろん常にそうなるとは限らないが、32チームからなるグループステージは非常に見応えがある。消化試合を減らし、エキサイティングな順位決定戦の可能性を高める。また、決勝トーナメントに進むチームを「16」とするのも効果的だ。

    ただ問題なのは、FIFAがその“無限の知恵”で今さらそれに気づいたことだった。すでに2026年大会から出場枠を48チームに決めてしまったのだ。当初は3チームずつ16グループを作る予定だったが、インファンティーノでさえも4チームによるグループ分けが素晴らしいと気づき、計画の見直しが必要と述べている。

    しかし現状では、3位までの「ベストチーム」が決勝トーナメントに進めるという恐ろしいフォーマットを再導入するのが解決策となってしまっている。それでさえも第3節に無意味な試合が増加するリスクを抑えられない。FIFAが作り出した最悪の結末だ。

  2. 勝者:キリアン・エンバペ
    Getty

    勝者:キリアン・エンバペ

    生まれながらのフェノメーノ(怪物)であり、記録達成を運命づけられた天賦の才の持ち主。ディディエ・デシャンが「ワールドカップはエンバペの大会」と話しているが、まさにその意味のとおりである。

    サッカー最高の舞台で、エンバペはスポットライトを浴びてもまったく動じない。考えてみてほしい。アルゼンチン戦で彼が蹴った2本のPK、どちらかを外すと思った瞬間はあっただろうか? 先制点から95秒後、落ちてくるボールを豪快にボレーで叩き込むことも想像できてしまったはずだ。

    エンバペは必然である。もしコンディションを維持できれば、史上最も偉大な選手の1人として名を残すことは間違いない。

  3. 敗者:クリスティアーノ・ロナウドの名声
    Getty

    敗者:クリスティアーノ・ロナウドの名声

    少なくとも、フェルナンド・サントスは更迭された。これはC・ロナウドにとって、2022年大会から得られる唯一のプラス材料かもしれない。しかし次の監督が、彼をベンチに座らせた指揮官たち(サントスとマンチェスター・ユナイテッドのエリック・テン・ハーグ)と同じ結論に至る可能性は十分にある。モダンサッカーを追求するとなると、そこにプレスしない/できない選手は必要ない。

    この大会は、C・ロナウドにとって贖罪の場となるはずだった。未だ最高レベルで何を提供できるのか、みんなに思い起こさせる大会になるはずだった。しかしそれとは裏腹に、彼の劇的な衰退を示す証拠となってしまった。彼がカタールに到着したのは、マンチェスター・Uとの関係を解消してまもなく。そしてサントスとの関係も騒がれ続け、偉大なスポーツマンとしての名声は煙に巻かれている。

    リスペクトについて何度も口にする彼が、カタールでは監督やチームメイト、対戦相手、そしてサポーターでさえも、リスペクトを示さなかったのは興味深い。GOATとして……。

  4. 勝者:アルゼンチン人サポーター
    Getty

    勝者:アルゼンチン人サポーター

    ワールドカップ最高のファンは? 最も整然としていたのは、日本だ。試合後にはボランティアの清掃活動まで手伝ってくれたのだ。それは当然である。そしてイングランドのサポーターも特筆すべき。逮捕者が1人も出なかったのだ。“スリー・ライオンズ”のファンにとっては歴史的偉業なのである。

    一方でモロッコの試合を観戦した人たちは、試合後も耳鳴りが止まらなかったはず。チームがボールを持っていない間、ファンは常にブーイングを続けていたのだ。彼らがカウンター主体であったことを考えると、かなりの時間それを味わったことになる。

    しかし「応援」という点については、この大会はアルゼンチンのものだった。90分間スタジアムを占拠しただけでなく、試合後もスタジアムを支配し続けた。アルゼンチンの優勝は選手たちの勝利であると同時に、サポーターの勝利でもあった。

  5. 敗者:アーセン・ヴェンゲル
    Getty Images

    敗者:アーセン・ヴェンゲル

    かつてアーセン・ヴェンゲルは、サッカー界で最も尊敬される人物の1人だった。しかし、今は違う。あれだけ過密日程に文句を言っていた男が、今では既存の大会の拡大や他の大会を新設しようとしている。

    アーセナルの伝説からFIFAスタッフに転職した彼は、選手の福祉・健康を取り巻く議論の中で「否定的な」暴言を吐いた。実際に負担を強いられている選手は試合数の増加に猛反発しているにも関わらず、である。さらに悪いのが、デンマークとドイツの敗退を引き合いに出して、カタールで政治的メッセージを残したチームはパフォーマンスが悪かったと指摘したことである。モロッコがパレスチナ人の窮状を訴えるためにこの歴史的な機会を利用していたことは完全に無視してでだ。

    2年に1度のワールドカップ開催という前回の提案と同じくらい無意味な議論だが、それ以上に哀れなものであった。

  6. 勝者:ルカ・モドリッチ
    (C)Getty Images

    勝者:ルカ・モドリッチ

    人口たった400万人のクロアチアは、ロシアで準優勝、そしてカタールで3位に入った。ルカ・モドリッチこそ、その奇跡の立役者である。37歳でありながら、ズラトコ・ダリッチ監督が言うように20歳のようなエネルギーでプレー。技術的に素晴らしいだけでなく、中盤で次々にボールを刈り取った。

    指揮官は「これで終わりと考える人もいるが、私は彼がずっと一緒にいてくれると思う」と話した。そうであってほしい。なぜなら、彼は未だに見るものを魅了し続けているからだ。

  7. 勝者:モロッコとアフリカ、アラビアのサッカー
    getty

    勝者:モロッコとアフリカ、アラビアのサッカー

    モロッコの大会は2つの悔しい敗戦で終わってしまったが、失望はすぐにプライドに取って代わった。エンバペがアクラフ・ハキミに伝えたように、「悲しまないでくれ。みんなが君を誇りに思っている。君は歴史を作ったんだ」と、その通りだったのだ。

    アフリカ勢として初めてベスト4の壁を打ち破った。才能と組織、闘志、そして声援が一体となったとき、国際舞台では過小評価されるチームに一体何が可能であるのか、彼らが再定義したのだ。レグラギ監督は、「自分たちは究極の負け犬の物語、サッカーで言うところの『ロッキー』だ」と話していた。それは正しい。ディマ・マグリブ!

  8. 敗者:ネイマール
    Getty Images

    敗者:ネイマール

    1人の男がこれほどまでにワールドカップで傷つくことがあるのだろうか? ネイマールは今大会、肉体的にも、精神的にも、苦痛しか経験していない。

    カタールでは初戦でケガを負い、2試合を欠場。それでも決勝トーナメント1回戦では韓国相手にゴールを奪い、続くクロアチア戦でも衝撃的な得点でネットを揺らした。そしてブラジル歴代最多得点記録保持者となったのだ。しかしブラジルはその後追いつかれ、PK戦で敗退。ネイマールは5人目のキッカーだったが、そこに到達することもなかった。

    またしても彼のワールドカップは、涙のうちに幕を閉じた。ペレは「君のレガシーはまだ完成していない」と言う。それは彼を安心させるための言葉であった。しかしこの状況では、この最高の才能が潜在能力のすべてを発揮できない運命にあることを認めているようにしか思えなかった。

  9. 勝者:フランスのメンタリティ
    Getty

    勝者:フランスのメンタリティ

    正直に言って、フランスは一度も完ぺきなパフォーマンスを見せていない。90分間支配し続けることは一度もない。しかし、イングランドやモロッコを破り、アルゼンチンとは延長戦やPK戦まで持ち込んでいる。

    大会前からカリム・ベンゼマにポール・ポグバ、エンゴロ・カンテを失い、始まってからもリュカ・エルナンデスの負傷、さらにはウイルスまん延など様々な理由に苦しめられていた。

    それでも、フランスの底力と闘志、驚異的な回復力を発揮。2大会連続のトロフィーに指先はかかっていた。デシャンとその選手たちは、チャンピオンチームとしての威厳を放ったことは間違いない。

  10. 勝者:リオネル・メッシ
    Getty Images

    勝者:リオネル・メッシ

    願い続けたトロフィーを手にした後、彼は国際舞台でプレーを続けたいと語った。それは簡単に理解できる。過去1年半の成功だけでなく、リオネル・スカローニやチームメイトたちと築いた揺るぎない絆によるものであろう。

    だが、すべてを手に入れ、すべてを成し遂げたのも事実だ。数少ない懐疑論者は、クラブレベルでの輝かしい功績と比べて、国際舞台でタイトルを手にしていないことを揶揄してきた。だが、もうそれは不可能だ。昨年のコパ・アメリカに続き、ついにワールドカップも手に入れた。メッシは、サッカーを完成させたのだ。

    ▶【dポイントが貯まる・使える】ドコモスポーツくじでWINNER予想!今なら1口200円のクーポンをプレゼント