ロベルト・フィルミーノ:リヴァプールの真のレジェンド
土曜日のアンフィールドは、別れの日となる。リヴァプールの偉大な勝利の数々に指紋と足跡を残した旗手、ジェームズ・ミルナー、そして確実にタイトルに貢献した、ナビ・ケイタとアレックス・オックスレイド=チェンバレンの退団が発表済みだ。
また、過去11年間、レッズをヨーロッパ屈指の強豪に育て上げたスポーツディレクター、ジュリアン・ウォード、リサーチ部門の責任者であるイアン・グラハム、ローン部門のディレクター、デイヴィッド・ウッドファインもチームを去る。
しかし、最も感動的な瞬間は、踊る足と最高の笑顔を持つブラジル人が「さよなら」と言うときだろう。ロベルト・フィルミーノは、まさにリヴァプールの伝説であり、この週末は彼のためにある。
アストン・ヴィラ戦のマッチデープログラムの表紙を飾るのは彼であり、ファンが誰よりも見たい、そして得点してほしいと思うのは彼である。日本時間20日23時、KOPが彼の名前を最後に歌うとき、感動的な一日となるだろう。
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魔法のような8年間
契約満了でアンフィールドを去ることになったフィルミーノにとって、魔法にかかったような8年間だったと言わざるを得ない。フリックやトリック、ゴールやアシスト、トロフィー、そして素晴らしい、素晴らしい思い出がある。
土曜日のアストン・ヴィラ戦に出場すれば、リヴァプールでの試合数は361回を数えることになる。その間に109ゴール、72アシスト、そして6つのタイトルを手にした。
まさに最高の補強で、素晴らしい選手だった。彼は2019年にレッズを世界王者にした男であり、大一番でのゴールで30年待ち続けたリーグタイトルをもたらした男でもある。
彼はほとんどインタビューに答えず、英語もほとんど話せなかったが、そのキャラクターと個性でチームメイトやファンから慕われるようになった。「ノールック」フィニッシュとカンフーセレブレーションもそれに拍車をかけた。
では、フィルミーノはどんな選手で、そしてリヴァプールにとって、どのような意味を持つ選手だったのだろうか。
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2900万ポンドで加入
今では忘れがちだが、フィルミーノのリヴァプールでの生活は、幸先の良いものではなかった。2015年夏にホッフェンハイムから獲得した彼の契約は、すぐにブレンダン・ロジャース監督とクラブのスカウト・採用チーム、今では有名な「移籍委員会」の間に存在する不和を象徴するようなものだった。当時、多くの意味で、失敗したシステムと失敗したクラブの象徴と見なされていたのだ。
ストーク・シティで1-6の屈辱を味わった、困難な2014-15シーズン後、多くのファンが驚いたことに、ロジャースは執行猶予を与えられ、代わりにバックルームスタッフの主要メンバーを解雇することを選択した。
その夏、再起をかけたロジャースは、センターフォワードの獲得に躍起になっていた。アストン・ヴィラのクリスティアン・ベンテケが第一候補だったが、チーフスカウトのバリー・ハンター、採用担当のデイブ・ファローズ、スポーツディレクターになりたてのマイケル・エドワーズが率いる採用チームは、フィルミーノを見極め、その獲得を強く推していた。
結局、リヴァプールは2人を獲得。フィルミーノには2900万ポンドを支払い、ベンテケのヴィラでの放出条項を発動させるために必要な3250万ポンドを支払ったのである。
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クロップの下で覚醒
フィルミーノの初期の数週間は困難だった。ベンテケを9番として起用されたため、2015-16シーズンはベンチスタートとなり、10月初旬にロジャースが解任されるまでわずか4試合にしか出場できなかった。出場しても、ウイング、10番、あるいはオールド・トラッフォードでの屈辱的な敗北の際には、左ウイングバックとして配置された。
しかし、クロップ監督の就任は、すべてを変えることになる。フィルミーノは、クロップ監督の就任初戦で負傷したが、2週間も経たないうちにセンターフォワードとして先発出場。スタンフォード・ブリッジで行われたジョゼ・モウリーニョ率いる王者との対戦で3-1の勝利の主役を演じた。
ドルトムント時代にフィルミーノを間近で見ていたクロップは、リヴァプールが獲得に踏み切ったことを聞かされ、「賢い契約」と考えていた。そして、エティハドでマヌエル・ペジェグリーニ率いるマンチェスター・シティを4-1で下した試合で、フィルミーノがレッズの初ゴールを決めたとき、多くの人が彼の意見に同意し始めた。
彼は、決して典型的な9番ではなかった。パワーと空中戦が持ち味のベンテケのような選手でもない。しかし、フィルミーノのタッチ、意識、巧みな走りは、ディフェンスを引き離し、他の選手が活躍するためのスペースを与えていた。
その無私の精神と知性は、ゴールと同じくらい、彼のリヴァプールでの時間を特徴づけることになった。
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世界一の3トップ
フィルミーノのリヴァプールでの最初のシーズンは、全コンペティションで49試合に出場して11ゴールという十分な結果を残したが、クロップが彼のそばでピースを組み立てるようになってから、彼の輝きはさらに増し始める。
まず、2016年夏にサウサンプトンからサディオ・マネがやってきた。このセネガルのスターは、すぐにスピードとダイナミズム、そしてワイドからのゴールを加え、最初のシーズンでリヴァプールの年間最優秀選手賞を受賞した。
そして12か月後、レッズは再び大当たりを引き当て、ローマからモハメド・サラーを迎えた。3700万ポンドという移籍金を考えても最高の補強となった。
フィルミーノ、マネ、サラーの3人は、プレミアリーグを、いやあらゆるチームを蹂躙した。彼らの最初のシーズンは、合計91ゴールを挙げ、チャンピオンズリーグ決勝に進出。2年目は69ゴールとビッグイヤー獲得、3年目は57ゴールと欧州スーパーカップ、クラブワールドカップ、そして最も記憶に残るプレミアリーグのタイトルを手にした。
2022年夏、マネがバイエルン・ミュンヘンに移籍したことでトリオが解散するまでに、彼らは5シーズンで338ゴールを記録した。これは非常に素晴らしい記録であり、3人全員がアンフィールドの伝説として語り継がれるであろう。
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鳴り響いたチャント
フィルミーノは直近の試合に出場しておらず、水曜日に筋肉の問題からトレーニングに復帰したばかりだ。しかし、レスター・シティに3-0で勝利したレッズの快適な勝利の最後の数分間、彼の名前がスタジアムに鳴り響いていた。
このチャントは、「Siiiii Senor」とフィルミーノが「世界一」であることを宣言するもので、リヴァプールの歴史上、最も人気があり、最も優れたチャントの1つだ。過去数年間、ヨーロッパ中、世界中で歌われてきたもので、レッズに密着していれば、列車や空港、高速道路のサービスステーションやアウェーの試合会場などで耳にしたことがあるはずだ。
フィルミーノはそれが大好きで、キングパワーでのサポーターやチームメイトの反応に心から感動しているように見えた。土曜日にアンフィールドでこの曲を聴くのを楽しみに待っていよう。
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別れのとき
3月初旬に退団が報じられ、ここまで長い日々だった。クロップ監督は、フィルミーノがもう1年契約することを望んでいたし、期待していたため、この決断に「驚いた」と認めたが、冷静に考えてみれば、この別れはすべての関係者にとって理にかなっている。
フィルミーノは10月で32歳になるが、ここ数シーズン、リヴァプールへの影響力が弱まっていることは明らかである。昨シーズンは全コンペティションで17試合しか先発しなかったし、今シーズンも17試合しか先発していない。2022年のカラバオカップ決勝はケガで欠場し、FAカップとチャンピオンズリーグの決勝はいずれもベンチだった。何年もレッズの主力として活躍してきたが、打撲や筋肉疲労が彼を蝕み始めている。
もちろん、彼はまだ試合に影響を与えることができるだろう。これまでも、そしてこれからも、ゴール数だけで判断されることはないだろうが、過去4シーズン全コンペティションで43ゴールしか挙げていない。また、アシスト数も減少し、過去2シーズンでわずか10にとどまっていることも、影響力の低下を物語っている。
クロップはすでに、新たな強力な前線を築き上げようとしている。サラーをはじめ、ディオゴ・ジョタ、ルイス・ディアス、ダルウィン・ヌニェス、コーディ・ガクポはいずれも26歳以下で、多くのポジションをこなすことができるため、アンフィールドの優れた攻撃陣の新時代のピースは潜在的に整っている。
しかし、それは今までのような特別な、スリリングなものにはならないだろう。フィルミーノが今週末に別れを告げるとき、たくさんの涙が流れるはずだ。
彼は、現代のリヴァプールの偉大な選手の一人であり、惜しまれながらアンフィールドを去ることになる。