リオネル・メッシが謹慎処分。過去にクラブから処分を科されたスター選手たちは?

Ozil Aubameyang Messi
【欧州・海外サッカー 特集】バロンドールを7度獲得したメッシは、無許可でサウジアラビアに渡航したとPSGから2週間の謹慎処分を受けた。他にもあった同じような事例を振り返ってみよう。

5月2日、パリ・サンジェルマンがサッカー界に衝撃を与える発表をした。ワールドカップ・チャンピオンのリオネル・メッシを、2週間の無報酬の謹慎処分としたというのだ。その後、メッシが監督やクラブの意向を無視して練習をさぼり、高額なスポンサー契約を交わしたサウジアラビアに渡航していたことが判明した。

PSGは、この夏クラブを去る可能性が高まっている選手を見せしめにすることを決め、リーグ・アンのタイトル獲得が多少危うくなっても、チーム最大のスター選手のひとりに2週間という長期間の処分を科したのだ。

所属クラブや代表から処分を受けたスター選手はメッシだけではない。事実、規律違反を理由にプレー時間を奪われたスター選手は枚挙にいとまがないのだ。

今回は所属チームから処分を受けたスター選手たちを振り返ってみよう。

  1. リオネル・メッシ
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    リオネル・メッシ

    メッシは中東の雄であるサウジアラビアと交わした高額なスポンサー契約に関係する取り決めを果たすべく、PSGの許可なく、今週はじめの数日間、サウジアラビアに渡航した。

    報道によるとメッシはこの渡航について、事前にクラブに知らせ、クリストフ・ガルティエ監督は日曜日のロリアン戦に勝つか引き分ければその計画を容認すると同意していた。ところがPSGは3対1で負け、直近のホームでの4試合で3敗目を喫してしまった。それでもメッシはサウジアラビアの首都リヤドに向かったのである。

    その結果、PSGはメッシにクラブのいかなる施設にも立ち入りを禁止し、メッシは練習への参加も公的な場に姿を現すこともできなくなった。これは長くつづいた契約解除論争の最後の決定打にもなると思われる。メッシが来シーズン、パルク・デ・ブランスのピッチに立つことはないだろう。

  2. メスト・エジル
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    メスト・エジル

    かつて世界で最も優れた攻撃的ミッドフィルダーの一人だったエジルは、そのキャリアにおけるアーセナル時代の最後に大きく失速させられた。ドイツ代表だったエジルは、クラブから2020-21シーズンの契約更新を断られ、北部ロンドンのチームを去ることになったのである。

    最終的には1月にトルコのフェネルバフチェへ加入したが、度重なる怪我で満足なパフォーマンスが出来ず、とうとうイスマイル・カルタル監督の怒りを買って、リーグ戦最後の8試合に出場することができなかった。

    エジルとしては、クラブとの間になんら問題はないと主張したが、契約の最初の6カ月に給与の支払いがなかったと指摘している。シーズン終了とともにチームを去り、3月、34歳で早すぎる引退をした。

  3. ピエール=エメリク・オーバメヤン
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    ピエール=エメリク・オーバメヤン

    オーバメヤンはプロになってから、いろいろなところでトラブルメーカーのようになっていた。2018年1月、ボルシア・ドルトムントは練習後のチーム・ミーティングに参加しなかったとしてオーバメヤンを処分し、罰金を科した。オーバメヤンは、おそらくは移籍市場が閉まる前にアーセナルに加入したいとの希望に関連してチームに従わず、ドイツでの生活は終わりを告げた。

    4年後、ガナーズを去る時も同じような状況からだった。2021年12月、オーバメヤンはフランスにいる母のもとを訪れ、1日遅れで練習に戻った。クラブは速やかに彼からキャプテンの座をはく奪し、次のサウサンプトンとの試合から外した。

    ミケル・アルテタ監督は、オーバメヤンを外したのは「規律違反」があったからだと説明した。スター・ストライカーはひとりでの練習を余儀なくされ、トップチームとの帯同を禁止された。6週間後、バルセロナに移籍した。

  4. マリオ・バロテッリ
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    マリオ・バロテッリ

    プロになってからのバロテッリは、常に良い意味でも悪い意味でも注目の的だった。とてつもない才能をもったイタリア代表は、サッカーのピッチで素晴らしい瞬間を思う存分満喫する一方で、ピッチの外での悪ふざけが最も記憶に残る選手となるかもしれない。

    すべての始まりは2009年、とてつもない才能がありながら誰もが認める気分屋のバロテッリは、インテル時代、当時のジョゼ・モウリーニョ監督と衝突した。監督は公の場でバロテッリが真剣に練習しないと批判し、1月にまるまる1カ月間試合に出さなかった。

    マンチェスター・シティへ高額移籍を果たした後も、事態は好転しなかった。女性刑務所への訪問から浴室での花火騒ぎまで、マンチェスター・シティ時代のバロテッリはセンセーションを巻き起こした。2012年初頭まで正式な処分を受けることなかったが、プレミアリーグのトッテナム戦でスコット・パーカーの頭を踏んだことで4試合の出場停止処分となった。

    1年後、ACミランでも同じように、ナポリ戦で負けた後レフェリーに対して「威嚇し侮辱する」言葉を放ったとして処分を受けた。さらに、2014年の後半、リヴァプール在籍時には、インスタグラムに反ユダヤ主義的な画像をアップしたとしてFAから処分を受けている。

  5. ロイ・キーン
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    ロイ・キーン

    マンチェスター・ユナイテッド時代のキーンには数々の問題行動があった一方、強いタックルと攻撃的なスタイルで、一流のミッドフィルダーとしての評判を上げていった。

    2001年、マンチェスター・シティのアルフ・ハーランドに膝蹴りをくらわしたことでニュースとなった。その4年前に、ハーランド「キーンは怪我のふりをしている批判したことへの明らかな報復行為であった。ハーランドはその後フルタイムでプレーすることができなくなり、キーンは合計8試合の出場停止処分に。現役引退の危機とも言われた。

    しかし、キーン最大の非行は、クラブでのものではなく、2002年ワールドカップの際のアイルランド代表としてのものである。その事件は神話のように謎めいているが、報道によると、キーンは大会前のサイパンでの代表合宿にいら立ちを露わにし、用具の到着が遅かったことや駐車場よりもピッチの芝の状態が悪いなどと不満をもらした。

    翌日さらに悪いことに、練習2日目、キーンは即時解決のためチームを離れるつもりだと発表した。当時のミック・マッカーシー監督は思いとどまるよう説得したが、事態は悪化するばかりだった

    大会の開始直前に最悪の事態となった。キーンは、かの悪名高い、監督に向かっての10分間の悪態三昧を放ったのだ。最後にはマッカーシーの「ケツの穴にワールドカップを差しこめばいい!」と叫んだという。その後2年間近く代表に呼ばれなかったが、2004年に復帰を果たし、9試合出場したのを最後にアイルランド代表を去った。

  6. カルロス・テベス
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    カルロス・テベス

    2011年9月、チャンピオンズリーグでマンチェスター・シティがバイエルン・ミュンヘンに負けたとき、テベスがサブとして帯同することを拒否したことは有名だ。アルゼンチン代表のストライカーはクラブ内で最も高給取りであり、報道によると、当時のロベルト・マンチーニ監督と激しく言い争い、すぐに2週間の出場停止処分が下った。さらにマンチェスター・Cは50万ポンド(約8,450万円)の罰金も科し、これは当時、プレミアリーグ史上最高額の罰金だった。

    テベスはすべてが誤解から生じたものだと主張したが、生まれ故郷のアルゼンチンに何とかして戻ろうとするようになったのは、それから間もなくのことだ。最終的に3月にトップチームに戻り、高額の罰金の支払いにも応じた。

  7. ウスマン・デンベレ
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    ウスマン・デンベレ

    デンベレは将来を嘱望された20歳だった2017年、ドルトムントで1週間の出場停止処分を受けた。フランス代表のウィングは無許可で練習を休み、チームはドイツのカップ戦で敗退。明らかに、夢だったバルセロナへの移籍を勝ち取るための仕業であった。

    事件後まもなく、ドルトムントはデンベレを1億3,000万ユーロ(約193億円)で手放すことを拒否し、バルセロナは手放したばかりのネイマールの代わりを探すこととなる。

    もちろんデンベレは最終的には移籍することとなったが、バルサはその獲得のために1億4,500万ユーロ(約216億円)を支払うこととなる。デンベレが今後ドイツのクラブに戻りにくくなったことは確かである。

  8. パトリス・エヴラ
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    パトリス・エヴラ

    エヴラは2017年11月、欧州リーグ敗退の前にチームのファンを蹴った後、間違った理由でニュースとなった。マルセイユとヴィトーリアSCの試合前に、あるファンがエヴラにやじを飛ばした。『レキップ』によると、フランス代表のフルバックは「サッカーをする気が失せた」のであった。30分近くもやじられた後、とうとうエヴラはそのファンに襲いかかった。クラブはすぐさま1試合の出場停止処分を下し、さらにフランスサッカー界がエヴラを7カ月の出場停止処分にしたのであった。

  9. ジェームズ・マディソン
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    ジェームズ・マディソン

    マディソンは2021年、新型コロナウイルスに関する規約違反でレスター・シティから懲戒処分を受けた唯一の選手ではない。ただし、処分を受けた中でおそらく最も有名な選手であり、出場停止によって最も深刻な影響を受けた選手である。

    レスター・シティのミッドフィルダーは、延期されたEURO 2020大会においてガレス・サウスゲート監督率いるイングランド代表の一翼を担うべき選手であったが、プレミアリーグの規定に違反し、チームメイトのハムザ・チョードゥリーやアジョセ・ペレスとパーティーに参加してしまった。3人は1試合の出場停止処分となったが、マディソンの場合、EUROを前にサウスゲート監督にアピールする絶好の機会を失ってしまったのであった。

    当時レスター・シティの監督だったブレンダン・ロジャーズは、マディソンの出場停止処分が彼のイングランド代表への招集に影響を与えたとは認めなかったが、その後マディソンはチームから外されることとなった。

  10. ニコラ・アネルカ
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    ニコラ・アネルカ

    アネルカは20年近い現役時代、かなり多くの物議をかもした選手である。始まりは貧相なものだった。わずか19歳のとき、3日間練習をさぼったためにレアル・マドリーから処分を受けたのだ。

    だが、アネルカの最も有名な事件は、2010年のワールドカップの時のものだ。アネルカは、当時フランス代表の監督だったレイモン・ドメネクに対する反抗が広く知れわたり、たちまちフランス代表として18試合の出場停止処分が下った。アネルカは、メキシコ戦のハーフタイム中に更衣室でドメネク監督と衝突し、「ク*野郎、おまえの親は***」と言ったといわれている。

    その後、アネルカはチームにストライキを起こさせ、何人かの他のベテラン選手と結束してフランスサッカー史上最大の論争のひとつを巻き起こした。フランス代表はグループリーグを勝ち抜くことができず、アネルカが代表に選ばれることは二度となかった。

  11. ジョーイ・バートン

    ジョーイ・バートン

    バートンは伝説的な選手だが、必ずしもプロの手本となるような選手ではなかった。現役時代は暴力で刑事告発されたり、サッカー賭博で18試合の出場停止処分を受けたり、暴力行為で何度もFAから処分された。

    その中でも特に目立つのは、2016年、自身のクラブから唯一受けた処分で、34歳だったバートンはレンタル移籍したレンジャーズ時代にチームメイトのアンディ・ハリデーに「不適切な言葉」を言ったとされる。

    クラブは3週間の出場停止処分を下し、事実、バートンはスコットランドでは5試合出場しただけで古巣のバーンリーに戻り、引退までの忘れられない1シーズンを過ごすこととなる。

  12. ケヴィン=プリンス・ボアテング
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    ケヴィン=プリンス・ボアテング

    ボアテングの将来有望なキャリアを傷つける事件がいくつかあった。

    ボアテングは、2014年のワールドカップの際、当時のガーナ代表のジェイムズ・アッピア監督に「低俗な言葉での侮辱」を行い、規律違反でガーナ代表から外された。ボアテングは罰を受け入れたが、のちに「ちょっと冗談を言っただけ」だったと主張している。

    それから1年も経たないうちに、シャルケで不遇に耐えていた際に間違った理由でニュースになった。ボアテングは当時のロベルト・ディ・マッテオ監督の構想から外れていたが、試合終了ぎりぎりのところで勝利したシュトゥットガルト戦で思いもかけないスタートを切ることになる。

    だが、その信頼を2対0で負けたケルン戦でみじめなパフォーマンスをしたことで棒に振ってしまう。シャルケはシーズン最後の2試合にボアテングを出場させず、まもなく契約解除となった。

  13. パブロ・オスバルド
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    パブロ・オスバルド

    彼を覚えている人が、どれくらいいるだろうか。オスバルドは2013年、当時のマウリシオ・ポチェッティーノ監督の下でチームを躍進させるべくサウサンプトンのスターとなる責任を負った選手だった。クラブ史上記録となる契約を交わしてセインツことサウサンプトンでのキャリアを確実に始めようとしていたが、1月になる前に破綻した。

    ストライカーのオスバルドは12月のニューキャッスル戦の最中、タッチライン際での喧嘩に関与し、FAから3試合の出場停止処分が下された。それから1カ月も経たないうちに、センターバックのジョゼ・フォンテと喧嘩し、クラブから2週間の出場停止処分を受けた。その後、レンタル移籍に出され、2015年7月にチームを去ったのだ。