プレミアリーグ守備陣に悪夢を与えるハーランド。PFA年間最優秀選手賞は序章に過ぎない

Erling Haaland PFA Award GFX
GOAL
ノルウェー人選手は、その驚異的なデビューシーズンで対戦したほとんどすべての相手を圧倒した。

2022-23シーズンのプレミアリーグ開幕の前週、アーリング・ハーランドはアラン・シアラーにこう話していた。「試合にはハングリー精神を持って臨まなければならない。3ゴール決めたとか、0ゴールだったとか、しばらくゴールを決めていなかったとか、そんなことは関係ないんだ」。

53試合で52ゴールという驚異的な記録を打ち立てたデビューシーズンを通して、ハーランドは常にハングリーであり続けた。2、3試合ゴールがなくても、ハットトリックを達成しても、彼は次の試合でも同じようにやる気満々で、再びゴールを狙う準備ができていた。

イングランドでの最初のシーズンは、あらゆる面で完璧だった。シティをプレミアリーグ優勝、FAカップ優勝に導き、そして何よりも、彼が最も切望していたチャンピオンズリーグ優勝に貢献した。また、プレミアリーグ31年の歴史の中で最多となる36ゴールという驚異的な数字を叩き出し、プレミアリーグ得点王としてゴールデンブーツも獲得した。

そして今、PFA年間最優秀選手賞をも受賞した。GOALは、この記録破りのノルウェー人選手に賛辞を贈りたい。一方、悪夢を見続けてきたDFにとっての悪いニュースとは? 彼はまだ始まったばかりということだ。

  1. 厳しいスタートに疑問の声

    厳しいスタートに疑問の声

    ハーランドがシアラーと話したとき、彼はイングランドサッカー界で不本意なデビューを飾ったばかりだった。リヴァプールに敗れたコミュニティ・シールドでは得点できず、30秒の間に2度のビッグチャンスを逃した。ボルシア・ドルトムントやレッドブル・ザルツブルクで1試合平均1ゴール以上を挙げていたノルウェー人選手が、シティで同じような活躍を見せるかどうか、すでに疑問視する声も出ていた。

    シティの歴代得点王、セルヒオ・アグエロもすぐにこう評した。「彼はドイツに慣れすぎていた。一人だと思っていたら、フィルジル・ファン・ダイクがやってきて、『プレミアリーグへようこそ』と言ったんだ」。

  2. 完璧な反応
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    完璧な反応

    その翌週、ハーランドはウェストハム戦で2得点を挙げ、プレミアリーグへのデビューを飾った。素早い足さばきでPKを獲得し、その場からゴール隅にボールを叩き込んだのだ。まるで、世界で最も競争の激しいリーグに加わるというプレッシャーのなかでも、この上なく冷静であることを示すかのように、彼は瞑想のポーズでゴールを祝った。彼の2点目のゴールは、巧みな動き出し、スピード、そして冷酷なフィニッシュが詰まっていた。

    ボーンマスとのホームでの初戦で、誰もがハーランドの両足に期待したが、4-0の勝利の中で得点することはできなかった。しかし、心配は無用だ。ニューカッスル戦ではゴールに絡む活躍を見せ、クリスタル・パレス戦とノッティンガム・フォレスト戦では連続ハットトリックを達成した。

  3. スローバック
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    スローバック

    ハーランドのイングランドでの最初のシーズンはシティのファンにとって夢のようなものだったが、彼の加入はプレミアリーグにとっても恩恵だった。多くの偉大なストライカーがイングランドのトップリーグを彩ってきたが、最近のリーグはモハメド・サラー、ブカヨ・サカ、エデン・アザールのようなウインガーや、ハリー・ケインのような低い位置でもプレーするフォワードが中心となっている。

    そんな中、ハーランドは別の時代にタイムスリップしたような存在であり、面白半分にゴールを奪い続ける彼のプレーは、どの試合でも一段と魅力的だった。「今日は何点取るのだろう」とシティの試合前に多くの人が思ったものだ。

    RBライプツィヒでは5ゴールを挙げ、63分にペップ・グアルディオラが交代させなければ、チャンピオンズリーグ史上初のダブルハットトリックを達成していたかもしれない。

  4. 77分毎に1ゴール
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    77分毎に1ゴール

    ハーランドの得点シーンは日常的なものとなったが、彼が記録した数字には驚かされるばかりで、見るたびに二度見してしまう。彼は53試合に出場し、全コンペティションで52ゴールを挙げてシーズンを終えた。

    プレミアリーグとチャンピオンズリーグの両方で得点王に輝き、両大会で平均77分に1ゴールを記録。プレミアリーグでの36得点は、28年間続いたシーズン最多得点記録を塗り替えた。

  5. レジェンドを斬る
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    レジェンドを斬る

    シアラーとコールだけがプレミアリーグのレジェンドだったわけではない。10月までに、彼は8試合でハットトリックを達成し、プレミアリーグでハットトリックを3回達成した最速の選手となった。それまでの記録保持者はマイケル・オーウェンで、リヴァプールでの達成には48試合を要した。

    2月末までに、彼はリーグ戦で27ゴールを決め、シティではアグエロが持つプレミアリーグのシーズン最多得点記録を更新した。

    元イングランド代表FWピーター・クラウチ氏は「もうバカバカしくなってきたよ。彼が得点するたびに、チームメイトでさえ少し恥ずかしそうにしている。スタッツや記録の話をするのは少し恥ずかしい。彼はいつもそれを破っているんだからね」と認めている。

  6. 舞台裏での周到な準備
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    舞台裏での周到な準備

    サッカー選手を父に、七種競技の選手を母に持つハーランドは、理想的な遺伝に恵まれている。シアラーは『Greastest Goalscorers』の中でこう語っている。

    「完璧なセンターフォワードを作るとしたら、素早い選手、空中戦に強い選手、ファーストタッチのうまい選手、動きのある選手、左右の足を使い分けられる選手を作るだろう。ハーランドはこれらの特徴をすべて備えている」

    しかし、ハーランドは単なる天変地異で生まれた怪物ではない。食事から睡眠パターン、試合後のマッサージに至るまで、ノルウェー人の日常生活は綿密に計画されている。彼は1日に約6,000キロカロリーを摂取し(※成人男性の摂取カロリーは約2,500キロカロリーとされている)、食べることに真剣に取り組んでいる。代表のチームメイトであるジョシュア・キングは「彼は熊のように食べる!」と認める。

    牛の心臓や鶏のレバーを食べるというハーランドのソーシャルメディアへの投稿は話題になったが、彼はノルウェー産のサーモンも大好きで、シティが彼のリクエストに応じて輸入している。できる限り濾過した水だけを飲み、牛乳もたっぷり飲むのが好きで、彼はそれを「魔法の薬」と呼んでいる。

    ハーランドはまた、質の良い睡眠をとることにも熱心だ。シルクのパジャマを着て、自然光を隠すオレンジ色のブルーライトメガネをかける。また、オーラ・リングを指にはめて睡眠の質と心拍数を測定している。

  7. さらなる記録、さらなるトロフィー、さらなる賞が待っている
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    さらなる記録、さらなるトロフィー、さらなる賞が待っている

    ハーランドが23歳になったばかりで、体調管理も万全であることを考えれば、ケガを避けてシティに留まりさえすれば、彼がさらなる記録を更新できない理由はほとんどない。

    ペップ・グアルディオラという理想的な監督と、できるだけ多くの得点をアシストするために自分のゴール数を犠牲にする覚悟のある、超優秀な選手たちが彼を支えている。すでにハーランドにシーズン得点記録を奪われているシアラーは、プレミアリーグ歴代得点王の座を非常に恐れているはずだ。

    ハーランドは、今シーズンの開幕節バーンリー戦で4分以内にゴールを決め、昨シーズンがまぐれではなかったことをすぐに示した。シェフィールド・ユナイテッド戦では、前半にPKを外したものの、ヘディングで得点を挙げて2-1の勝利に貢献した。

    シティはこれで3戦3勝となったが、プレミアリーグのタイトルを獲得するのは容易ではない。だが、彼にとってリーグタイトルも、ゴールデンブーツも、そして、イングランドサッカー界最高の個人賞であるこのPFA年間最優秀選手賞も最後の賞となることはないだろう。