日本サッカーの未来・U-20日本代表。アジア杯招集海外組が高橋のみになった理由と松木らメンバーへの期待
3月3日、ひな祭りの日に中央アジアのウズベキスタンを舞台にAFC U20アジアカップが開催される。2月15日には、同大会に臨むU-20日本代表メンバー23名も発表された。
そもそも「U20アジアカップ」という大会名自体に馴染みの薄い読者も多いかもしれない。旧称を「AFC U-19選手権」と言い、U-20W杯のアジア予選を兼ねる大会として2年に1度のペースで開催されてきた大会だ。前回大会はコロナ禍で中止となっており、今回が久々の開催となる。
原則として上位4チームが5月に開催されるU-20W杯への出場権を得られることとなっており、まずは「ベスト4入り」が大目標となる。「原則」としたのは、今回の世界大会がインドネシア開催のために出場権を既に保持しているため、仮にインドネシアが4強進出を果たすと、最後の椅子を懸けたプレーオフが実施されるからだ。
■3月アジア予選、5月に世界大会
従来は世界大会前年の秋に開催されていたが、今年からは世界大会と同年の開催となった。3月にアジア予選、5月に世界大会というスケジュールで、これは冨樫剛一監督が「難しくなった部分は少なくない」と率直に認めるとおりである。
「大事な時期に選手を貸してくれたクラブには本当に感謝しかない」と指揮官が実感を込めて話したが、このタイミングでの招集に応じてもらう代償として今年に入ってからの候補合宿などは断念。他国が強化合宿を張る中で、キャンプの視察などを通じて選手の状態を把握しながらの苦渋の選考となった。
また感謝の言葉は「出せない」という判断を下したクラブも存在している状況の裏返しでもある。Jクラブには「日本サッカーの未来のために協力を」という言葉が届くが、欧州のクラブにそのロジックは通用しない。交渉は重ねたものの、最終的に彼らの招集は断念せざるを得なかった。1次予選には参加していたMF福井太智(バイエルン・ミュンヘン)らはメンバーリストに含めることができず。若年での欧州進出が一気に進んでいる年代だが、海外組はDF高橋仁胡(バルセロナ)のみにとどまった。
とはいえ、大黒柱としての活躍が期待されるMF松木玖生(FC東京)を筆頭に、若手の精鋭を揃えたチームの期待値が低いわけではない。昨年J2で長足の進歩を見せて代表でも存在感を出し続けたMF佐野航大(ファジアーノ岡山)、10番を託されたFW北野颯汰(セレッソ大阪)など期待の逸材がひしめく。
また、大学サッカーでの成長ぶりを認められたDF諏訪間幸成(筑波大学)、負傷での戦線離脱から帰ってきたMF甲田英將(名古屋グランパス)など限られた条件の中でも戦力的な上積みも図ってきた。過去の遠征などでもベストメンバーを招集できていたわけではないため、初めて、あるいは久々に一緒にプレーする選手というのも多く、ぶっつけ本番になってしまう部分はあるが、大会を戦いながらチームを整えていくことになる。
■国際舞台での経験値
グループステージではまず中国、キルギス、サウジアラビアと対戦する。最も力のある相手と目されるタイトルホルダーのサウジアラビアとの試合が最後に待っているため、できれば2連勝スタートといきたいのが正直なところ。その意味では中国との初戦が大きなポイントとなりそうだ。
そしてグループステージを突破し、事実上の世界大会出場決定戦となる準々決勝は大会最大の山場となる。各国がここに照準を絞って全力をぶつけてくるため、一発勝負独特の緊張感と相まって毎大会に凄まじい激戦が展開される舞台だ。ここの相手は韓国になる可能性もあり、タフな戦いになるのは確実である。
ウズベキスタンで過ごす日々は若い選手たちにとって「アジア予選」をシビアに体感する貴重な舞台となる。コロナ禍の影響で国際舞台での経験値がごっそりと削られてしまった年代だけに貴重な場であり、そんな彼らが世界大会を経験できるかどうかは今後にも繋がってくる。日本サッカーの未来のために、落とすわけにはいかない大会が始まる。