「今のシティはハーランドがいなくても勝ち続ける力がある」。ショーン・ライト=フィリップス/インタビュー

manchester city haaland
(C)Getty Images
【欧州・海外サッカー インタビュー】元イングランド代表であり、マンチェスター・シティやチェルシーでプレーしたショーン・ライト=フィリップス氏が自身の古巣・シティについて語った。

プレミアリーグ2連覇を達成したマンチェスター・シティが、世界中のファンと交流するトロフィー・ツアーを、約4カ月にわたって実施。11月、その最終目的地である日本へやって来た。GOALでは、このツアーに参加したマンチェスター・シティのレジェンド、ショーン・ライト=フィリップス氏に独占インタビューを行った。カタール・ワールド・カップにおける日本代表、そしてプレミアリーグ・ブライトンでプレーする三笘薫の活躍をまるで予言していたかのようなショーン氏は、古巣のマンチェスター・シティの強さについても元所属選手ならではの独特な視点で語っている。(インタビュー日:11月12日 聞き手: Yukifumi TANAKA/田中幸文)

第1回:「世界はまだ知らない、三笘が輝くことを」

第2回:「初戦を勝てば、日本のスカイハイな自信にもなる」

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■たとえハーランドがいなくても…

――現役時代にマンチェスター・シティに所属されていた頃、ご自身はマンチェスター・ユナイテッドに対するライバル心のようなものは持っていらっしゃったのですか?

 僕の場合は、マンチェスター・シティのユースアカデミーへの所属が決まった16歳の時からだね。それ以前から、シティとユナイテッドのライバル関係はずっと続いていました。ホームスタジアムも2マイル(約3.2km)ほどしか離れていないし、学校に通うようになれば、マンチェスターの子どもたちはシティかユナイテッドか、どちらのクラブのサポーターになるか決めるしね。

僕が若かった頃はユナイテッドが勝ち続けている黄金時代で、シティはとても難しい時期を過ごしていた。今の子どもたちや世界のサポーターたちは、シティが強くなってからファンになった人も多いと思うけれど、長年応援してくれている地元のファンは、シティの暗黒時代からずっと変わらずにサポートしてくれている。だからこそ、今のシティの栄光はそういった真のファンのサポートのおかげだと思っています。

彼らがいたからこそ、シティは成長することができたし、ずっと手にしたいと追いかけてきたものを今、手に入れることができました。そして、こうやって来日して、プレミアリーグトロフィーのグローバルツアーも実現できている。トロフィーやプレーヤーとともに、世界中のファンと交流する。シティは常に、サポートしてくれるファンに対して恩返ししたいと考えています。これは、僕が16歳の頃からずっとクラブが守り続けている精神なんです。だから、マンチェスターといえばレッドではなく、ブルーなんだよ(笑)。

――それにしても、プレミアリーグ2連覇やカラパオカップ(EFLカップ)の4連覇など、マンチェスター・シティの活躍には目を見張るものがあります。これは、2016年からクラブの監督を務めるペップ・グアルディオラの存在が大きいように感じますが、ショーンさんのご意見は?

 彼は勝つことにこだわっているからね。勝たなければ、ハッピーじゃない。「いいプレーをしなければ、悪い結果しかついてこない」と、彼はいつも選手たちに話している。監督として、ペップは選手たちを正しい方向へと導くことができていますよね。そして、チームとしてどんなプレーを実行してほしいかを、彼は全て伝えることができる。どんな結果であれ、今のマンチェスター・シティはチーム全体でいいプレーをしようとチャレンジしています。

選手はどんな時もチャンスを作らなければいけないし、ファンを楽しませなければいけない。ゲームが優勢に進んでいたとしても、ペップがサイドラインに立ってなにか選手に指示を出している場面をよく見かけることがあります。彼はとにかくハングリーなんです。だから選手たちも監督の期待に応えようとする。ペップのエナジーに、選手たちも刺激をもらっているのです。

監督というポジションは、選手たちと同じくらいメンタル面で挑戦しなければならない立場にあると思います。ペップは、まさにそれを体現している人物ですよね。そして立ち止まることもなく、選手たちに目標を伝え続け、モチベーションを上げている。だから、彼は現状に満足することがありません。僕もそんな監督の下でプレーできたらよかったなって思いますよ。

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――今シーズンから加入したアーリング・ハーランドも大活躍しています。ショーンさんには、彼の活躍はどのように映っていますか?

 彼は、本当にゴールをたくさん決めていますよね。セルヒオ・アグエロやダビド・シルバが、シティで活躍していた頃を思い出させてくれます。でも一方で、そういった「要となる選手がいなくなったらチームはどうなるのか?」という不安も感じます。なので一人の才能ある選手に頼ることは良くないです。それから、チーム内で競争させることも重要です。今のシティは、まさにそういったチームづくりをしている。最近の試合中でもハーランドがケガをしたことによって、フリアン・アルバレスが交代出場してきちんと役割を果たし、チームの勝利に貢献しました。もしアルバレスがいなかったら、ハーランドを失ったシティは、試合に勝つことはできなかったでしょう。

ハーランドは素晴らしいプレーヤーです。僕からしても、理解不能ですよ。ボールに触る時間が少ないのに、あれだけたくさんのゴールを決めることができるのですから(笑)。でも改めて強調したいのは、たとえハーランドという主力選手に「もしも」のことがあっても、今のシティは勝ち続けられる能力があるということです。

■Profile

ショーン・ライト=フィリップス(Shaun Cameron Wright-Phillips)

1981年10月25日生まれ。イングランド・ロンドン出身。現役時代はスピードとドリブルを持ち味とするサイドアタッカーで主戦場は右サイド。英国サッカーのレジェンド・イアン・ライトの養子。99年マンチェスター・シティ、05年チェルシー、08年シティに復帰、11年にQPR、15年アメリカ・MLSにプレーの場を移し、19年に現役を引退した。イングランド代表36試合出場6得点。息子はストーク・シティでプレーするディマジオ・ライト=フィリップス。

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