U-20日本代表、コロンビアに悔恨残る敗戦も「簡単に勝てるようじゃつまらない」…U20W杯で“勝ち取った学び”は成長の契機

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(C)Getty images
【サッカー日本代表 コラム】U-20日本代表はU-20ワールドカップ(W杯)2023のグループステージ2試合を終えて1勝1敗としている。

 U-20日本代表は、日本時間25日のU-20ワールドカップ(W杯)2023のグループステージ第2節でU-20コロンビア代表に1-2で敗れた。それでもグループステージ突破に向けて好位置につけるとともに、多くの経験を手にしている。【取材・文=川端暁彦】

■口々に語った初めての感覚

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「これで終わったわけじゃねえからな! 」

 試合終了後、集まってきた選手たちの輪の中からそんな声が聞こえてきた。1-2の逆転負け。悔恨も残る試合内容だったが、「今日の試合は今日で終わり。次の試合は今から始まっている。これはリーグ戦なんで」とMF福井太智が強調したように、何かが終わったわけではない。2試合を終えて、1勝1敗のグループ2位。「難しいグループなのはわかっていた」(冨樫剛一監督)のだから、まずは敗戦を受け入れて次の試合へ向かうべきだろう。

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 敗因は一つに絞れるものではないが、サッカーは相手あってのスポーツ。コロンビアが強力なチームであったというのはやはり大前提かもしれない。南米大陸で南米のチームと戦う難しさはコパ・アメリカに参加したA代表も痛感していたものだが、この試合でも選手たちは初めての感覚があったようだ。

「プレスのスピードが速い」ことにシンプルに驚いたと語るのは、途中出場でピッチに立った法政大学のMF松村晃助。グラウンド状態が悪く、ファーストタッチに少し苦労しただけで距離を詰められ、強健な肉体をぶつけてくる相手には戸惑い交じりの苦戦を強いられた。同じく交代出場のDF松田隼風も「ピッチは良いとは言えなかったし、いつもみたいにトラップしにいってポコッと浮いちゃうことがあった」と言うが、その「ポコッ」を見逃さずに奪いにいく抜け目なさとスピード感には最後まで苦労することとなった。

 また、松村が「奪えそうで奪えない、『いけるな』と思って飛び込んだら誘われていたということもあった。感覚的な部分かもしれないけど、持ち方とか深いところに置いて相手を飛び込ませてとか、すごくうまい」と、個人が相手の技術、駆け引き、あるいはフィジカル的な能力差によって出し抜かれて狩り切れないシーンも目立った。失点場面も高い位置で「奪えそうで奪えない」ところからスタートしている。

 日本でのプレー感覚では「いける」ところが「いけない」ことも多い中で、奪いに「いく」「いかない」の判断について選手間の意思統一、あるいは個としての決断力も鈍っていたのは否めない。「10番(ヤセル・アスプリージャ)とか今まで対戦した中で一番うまかったかもしれない」と振り返ったDFチェイス・アンリは、「あいまいに行ってしまったところから失点した」と悔やむ。

 福井は「一対一ではがされるシーンが多かったのは自分も含めて大きな課題」とした上で、日本の選手たちが手を焼いたアスプリージャについても「W杯なんだから、ああいう選手は絶対にいると思っていた。早い段階で基準を知れたのは良かったと思っている」と言う。「次はもっとやれる」という返答も多く、また松田が「試合のスピード感に慣れるまで時間がかかった」と振り返っていたように、日本人を相手にしているときとのギャップを埋めるための慣れが必要だったという面もあるだろう。

■次戦勝利で自力突破

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 試合結果そのものを大きく左右してしまった要素としては、もちろん松木玖生のPK失敗もある。「もっと平常心にコースを狙えばよかった」と本人は漏らしたものの、大ブーイングの中、VARチェックによる中断を経てキックを狙うのは外から観る以上に難易度は高い。

 そして、この男がこのシチュエーションに燃えていないわけもなく、「もちろん次は勝ちしか求めていないです。きつい状況に自分が追い込んだので、自分が結果を出していきたい」という言葉には隠し切れない強い感情が乗っていた。

 冨樫監督は「ちょっと粗削りだけど、戦いながらどんどん成長していってるなと思われるようなチームでありたい」と大会前に語っていた。「これはW杯なんで。簡単に勝てるようじゃつまらない」と豪語したのはチェイス・アンリだった。この敗戦が選手たちにとってのさらなるブレイクスルーに向けた契機となることを期待したいところだ。何しろ、「まだ何も終わってない」(チェイス・アンリ)のだから、当然だろう。

 若き日本代表はここまで2試合、異なる大陸の異なるタイプの強豪と競り合って、多くの学びを勝ち取りながら1勝1敗のグループ2位につけている。次のイスラエルも難敵だが、勝てば自力突破という至ってわかりやすい状況だ。ここで下を向くような選手なら、青いユニフォームを勝ち取っていない。

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